新年の幕開けは、ご先祖様へのご挨拶から

あけましておめでとうございます。
鎌倉の谷戸を吹き抜ける風にも、凛とした新年の響きが感じられるようになりました。
皆様、どのようなお正月をお過ごしでいらっしゃいますでしょうか。

我が家では、夫とささやかなおせちを囲み、穏やかな元旦を迎えました。
そして、毎年決まっておりますのが、新年最初のお墓参りでございます。
この習わしは、私が嫁いでからずっと大切にしてきたことのひとつ。
新しい年の始まりに、まずご先祖様にご挨拶を申し上げ、旧年の感謝と新しい年の抱負をお伝えする。
この時間を持つことで、心がすっと整い、清々しい気持ちで一年を歩み始められるような気がいたします。

澄み渡る冬空の下で感じる、新たな年の始まり

1月の霊園は、空気がどこまでも澄み渡り、遠くの山々の稜線まではっきりと見渡せます。
木々は葉を落とし、少し寂しげにも見えますが、そのぶん、冬の柔らかな陽光が墓石のひとつひとつを優しく照らし出しておりました。
時折、梢を揺らす風の音と、遠くで聞こえる鳥の声だけが響く静寂のなか、ゆっくりと石段を上ります。

この静けさの中で、自分自身の内なる声に耳を澄まし、ご先祖様との対話に心を集中させる。
これほど贅沢な時間はございませんね。
「今年もまた、無事に新しい年を迎えることができました」
その当たり前のようで、決して当たり前ではない幸せを、しみじみと噛みしめる瞬間でございます。

「あけましておめでとうございます」と心で語りかける時間

きれいに掃き清められたお墓の前に立つと、自然と背筋が伸びるのを感じます。
まずは、静かに手を合わせ、心の中で新年のご挨拶を。

「おじい様、おばあ様、そしてお父様、お母様。あけましておめでとうございます。昨年も、私たち家族をお見守りくださり、誠にありがとうございました。おかげさまで、皆健やかに新しい年を迎えることができました」

声に出すわけではございませんが、心の中で語りかける言葉は、不思議とご先祖様に届いているように感じられます。
この一年の無事を感謝し、そしてまた始まる一年への決意を新たにする。
新年のお墓参りは、私にとって過去と未来をつなぐ、かけがえのない大切な儀式なのでございます。

1月のお墓参り、いつがよろしいのでしょうか?

「先生、新年のお墓参りは、いつ頃に伺うのが良いのですか?」
私が主宰しております俳句教室の生徒さんから、時折このようなご質問をいただきます。
お正月は何かと慌ただしいですし、お祝い事の時期にお墓参りをして良いものか、迷われる方もいらっしゃるようですね。

結論から申しますと、お正月にお墓参りをすることは、何ら問題ございません。
むしろ、ご先祖様へ新年のご挨拶をするという意味で、とても良いことだと考えられております。

「松の内」を目安に、ご家族の集まる佳き日に

お墓参りの時期に厳密な決まりはございませんが、ひとつの目安となるのが「松の内」でございます。
松の内とは、お正月の松飾りを飾っておく期間のことで、年神様がいらっしゃる期間とされています。
この期間は地域によって少し違いがあり、関東では1月7日まで、関西では1月15日までとされるのが一般的です。

もちろん、必ずこの期間に行かなければならない、というわけではございません。
お正月はご家族やご親戚が集まる良い機会でもありますね。
皆様のご都合がつく日に、揃ってお参りされるのが何よりのご供養になることでしょう。
大切なのは、時期にこだわりすぎることなく、ご先祖様を敬うお気持ちでございます。

お正月のお墓参りは、本来とても縁起の良いこと

「お正月というおめでたい時期に、お墓という場所へ行くのは縁起が悪いのでは?」と心配されるお声も耳にいたします。
しかし、お墓は決して縁起の悪い場所ではございません。
ご先祖様が安らかに眠る大切な場所であり、私たちのルーツそのものでございます。

古来、お正月は年神様をお迎えすると同時に、ご先祖様の霊をお迎えして感謝を伝える行事でもありました。
ご先祖様がいたからこそ、今の私たちがいる。
その感謝の気持ちを込めて、一年の始まりにご挨拶に伺うことは、お正月の本来の意味にも通じる、大変意義深いことなのです。

大切にしたい、地域やご家庭ごとの慣習

とはいえ、お墓参りの作法や考え方は、地域やご家庭によって様々でございます。
例えば、沖縄の一部の地域では1月16日に親族でお墓に集まり、ご馳走を囲んでご先祖様を供養する「ジュールクニチー」という美しい慣習があるそうです。
また、ご年配の方の中には、三が日は避けるべき、とお考えになる方もいらっしゃるかもしれません。

もしご心配なことがあれば、ご親戚の年長者の方にご相談なさるのが一番よろしいかと存じます。
何よりも大切なのは、ご家族皆様が気持ちよくお参りできることでございますから。

寒さの中でも心温まる、冬のお墓参りの準備

一年で最も寒さの厳しい1月のお墓参りは、しっかりとした準備が欠かせません。
凍えるような寒さの中でも、心穏やかにお参りができますよう、服装や持ち物について、私のささやかな経験からお話しさせていただきますね。

服装は「きちんと感」と「万全の防寒」を大切に

お墓参りの服装に厳格な決まりはございませんが、ご先祖様へのご挨拶に伺うのですから、やはり「きちんと感」は大切にしたいものです。
普段着で構いませんが、あまりにも華美な色や、ラフすぎる服装は避けた方がよろしいでしょう。
黒や紺、グレー、ベージュといった落ち着いた色合いの服装が、霊園の静かな雰囲気にも馴染みます。

そして何より重要なのが、防寒対策でございます。
霊園は日差しを遮るものが少なく、風が吹き抜ける場所も多いため、想像以上に体温が奪われます。

  • アウター: 風を通しにくい、丈の長いコートがおすすめです。ダウンコートもよろしいですが、毛皮(ファー)のついたものは殺生を連想させるため、避けるのがマナーとされています。
  • インナー: 保温性の高い下着や、薄手のセーターなどを重ね着すると、温度調節がしやすくなります。
  • 小物: マフラーや手袋、帽子は必須でございます。特に耳や首元、手先が冷えますと、体全体が冷え切ってしまいます。
  • 足元: 石畳や土の上を歩きますので、歩きやすく、滑りにくい靴を選びましょう。ブーツも暖かくて良いですが、ヒールの高いものは危険ですので避けてください。 靴用のカイロを入れておくと、足先の冷えが和らぎます。

1月のお墓を彩る、新春にふさわしいお花たち

お墓にお供えするお花に、厳密な決まりはございません。
故人がお好きだったお花をお供えするのが、一番の供養になることでしょう。
ただ、どのようなお花が良いか迷われる場合は、季節のお花や、長持ちする縁起の良いお花を選んでみてはいかがでしょうか。
お正月らしく、少し華やかな色合いのものを選ぶと、お墓周りがぱっと明るくなりますね。

花の種類特徴と花言葉
長持ちし、古くから邪気を払うとされています。皇室の紋章でもあり、格調高いお花です。「高貴」「ご冥福をお祈りします(白菊)」
ストック甘い香りが特徴で、冬から春にかけて出回ります。ボリュームがあり、華やかな印象になります。「永遠の美」「愛情の絆」
スイセン凛とした姿が美しく、新春の訪れを感じさせます。ただし、球根などに毒性があるため、取り扱いには注意が必要です。
葉牡丹冬の寒さに強く、紅白の色合いがお正月にぴったりです。お花と組み合わせると、ぐっとお正月らしい雰囲気になります。
千両・万両赤い実が可愛らしく、縁起物として知られています。松などと合わせると、お正月飾りとしても美しいですね。

お供えするお花を選ぶ際のささやかな心遣い
バラのように棘のあるお花や、香りが強すぎるお花、また椿やサザンカのように花が首から落ちるものは、縁起が良くないとされ、避けるのが一般的でございます。

いつもの持ち物に加えたい、冬ならではの品々

お墓参りの基本的な持ち物に加え、冬ならではの準備をしておくと、当日慌てずに済みます。

  • 基本的な持ち物
    • 数珠
    • お線香、ろうそく、ライターやマッチ
    • お供え物(故人の好物など)
    • 半紙(お供え物を置く際に下に敷きます)
    • 掃除道具(ほうき、ちりとり、雑巾、スポンジ、ゴミ袋など)
  • 冬に便利な持ち物
    • お湯を入れたペットボトルや水筒: 霊園の水道は凍結して使えない場合がございます。また、冷たい水でのお掃除は手が悴んでしまいますので、ぬるま湯を持参すると大変重宝いたします。
    • ゴム手袋: 水仕事の際、手が濡れて冷えるのを防いでくれます。
    • 携帯カイロ: ポケットに入れておくだけで、かじかんだ手を温めることができます。
    • 乾いたタオル: 掃除で濡れた手を拭いたり、墓石の最後の仕上げ拭きに使ったりと、何かと役立ちます。

準備を万端に整えておけば、心にも余裕が生まれ、穏やかな気持ちでご先祖様と向き合うことができると存じます。

新年最初のお墓掃除と、感謝と抱負を伝えるお参り

準備が整いましたら、いよいよお参りでございます。
新年のお墓参りは、ただ手を合わせるだけでなく、一年分の感謝を込めてお墓をきれいにし、新たな年の抱負をご報告する大切な機会です。

まずは心を込めて、一年分の感謝を伝えるお掃除

お墓に着きましたら、まずはお墓に向かって一礼し、「お掃除をさせていただきます」と心の中でご挨拶をいたします。
それから、お掃除を始めましょう。

  1. お墓周りの掃除: まずは、敷地内の落ち葉や雑草を取り除き、ほうきで掃き清めます。ご先祖様が気持ちよく過ごせるよう、隅々まで丁寧に。
  2. 墓石の掃除: 次に、墓石をきれいにいたします。古いお花やお線香の燃えかすなどを片付け、水をたっぷり含ませたスポンジや柔らかい布で、優しく汚れを落としていきます。硬いタワシは墓石を傷つけてしまう恐れがありますので、お使いにならないでくださいね。
  3. 仕上げ: 最後に、乾いたタオルで水分を拭き取れば、墓石がすっきりと輝きを取り戻します。きれいになったお墓を眺めますと、こちらの心まで洗われるような気持ちになります。

このお掃除の時間も、大切なご供養のひとつ。
「昨年一年、ありがとうございました」と感謝の気持ちを込めながら手を動かすと、単なる作業ではなく、ご先祖様との対話の時間となるように感じられます。

もちろん、長年の水垢や苔など、自分たちのお掃除だけではなかなか落ちない汚れも出てまいりますね。そのような時は、無理をせず専門家の方にお願いするのも、お墓を大切に思う心からでございます。

お墓の建立から修繕、クリーニングまで、親身になって相談に乗ってくださる株式会社山本石材店のような石材店は、私たちにとって大変心強い存在です。
ご先祖様から受け継いだ大切なお墓を、永く美しく保っていくためにも、信頼できる専門家とのご縁を大切にしたいものですね。

お正月らしいお供え物と、心遣いの作法

お掃除が終わりましたら、新しいお花とお供え物をいたします。
お水鉢にきれいな水を満たし、花立てには持参したお花をバランスよく生けます。
お供え物は、半紙を敷いた上に置くのが丁寧な作法です。

お正月ですので、故人がお好きだったものに加えて、少しお正月らしい品をお供えするのもよろしいかと存じます。
例えば、みかんや、おせち料理の中から日持ちのするものを少しだけ。
お酒がお好きだった方には、お屠蘇を少しだけお供えするのも良いかもしれません。

お供えが終わりましたら、ろうそくに火を灯し、その火からお線香に火を移します。
お線香の火は、口で吹き消すのではなく、手で扇いで消すのがマナーとされています。

ご先祖様に伝える「昨年の感謝」と「今年の抱負」

お線香をあげたら、しゃがんで墓石よりも低い位置で、静かに手を合わせます。
数珠を手にかけ、目を閉じて、心の中でご先祖様に語りかけましょう。

まずは、昨年一年間、無事に過ごせたことへの感謝を伝えます。
家族の健康、仕事のこと、嬉しかった出来事など、具体的な報告をすると、より気持ちが伝わるように思います。

「昨年は、長女の〇〇に新しい家族が増え、私もおばあちゃんになることができました。これも皆様のお見守りのおかげと、心より感謝しております」

そして、新しい年の抱負や願い事をお伝えします。

「今年は、私も健康に気をつけながら、始めたばかりの俳句教室をもう少し大きくしていきたいと思っております。どうか、これからも私たち家族の行く末を、温かくお見守りください」

このように、感謝と抱負を心の中で静かにお伝えすることで、ご先祖様との絆を再確認し、新たな一年を歩む力をいただけるような気がいたします。

冬のお墓参りで、特に気をつけたいこと

心穏やかにお参りを終えるためにも、冬ならではの注意点がいくつかございます。
安全に、そして他の方への配慮を忘れずにお参りしましょう。

足元と水道の凍結には、くれぐれもご注意を

冬の霊園で最も注意したいのが、凍結です。
日陰になっている場所や、水はけの悪い通路は、朝晩の冷え込みで凍っていることがございます。
特に石段などは滑りやすくなっておりますので、一歩一歩、足元を確かめながら歩くように心がけてください。

また、先ほども少し触れましたが、霊園の水道が凍結して水が出ない、ということも珍しくありません。
お掃除用の水は、ご自宅から持参されると安心ですね。

火の元の管理は、いつも以上に慎重に

冬は空気が乾燥しており、火災が起こりやすい季節でございます。
お線香やろうそくの火は、お参りが終わったら必ず消すようにいたしましょう。
ろうそくの火は、火消しを使うか、手で扇いで消します。
お線香も、燃え尽きるのを見届けるか、火種が残らないように始末するのが大切です。
風の強い日は特に注意が必要ですので、火の取り扱いにはくれぐれもお気をつけください。

お供え物は感謝を込めて持ち帰るのがマナーです

お菓子やお酒などのお供え物は、お参りが終わったら持ち帰るのが基本的なマナーでございます。
そのままにしておくと、カラスなどの鳥や動物に荒らされてしまい、お墓が汚れる原因となります。
また、他のお参りの方のご迷惑になることもございます。

ご先祖様には、お供えしたそのお気持ちを召し上がっていただいております。
お供え物を持ち帰ることは、決して失礼なことではございません。
持ち帰ったお供え物は、「お下がり」として家族でいただくことで、ご先祖様からの福を分けていただく、という意味合いもございます。

結びにかえて

冬木立(ふゆこだち) 光あつめて 墓石あり

静まり返った冬の霊園で、ふと詠んだ一句でございます。
葉を落とした木々の間から差し込む陽光が、まるでそこに集まるかのように墓石を照らしている。
その光景は、ご先祖様が私たちを温かく見守ってくださっているようで、心がじんわりと温かくなるのを感じました。

新年のお墓参りは、ご先祖様への感謝と敬意を伝えるだけでなく、自分自身の生き方を見つめ直し、新たな一歩を踏み出すための大切な時間です。
澄み切った冬の空気の中で、ご先祖様と静かに対話することで、きっと清々しい気持ちで一年を始められることと存じます。

この記事が、皆様の新年のお墓参りの一助となれば、幸いでございます。
どうぞ、佳き一年をお迎えくださいませ。